親愛なるスカウト諸君!

2002/06/30 作成


 

◇最後のメッセージ                                 

   

 スカウト諸君  

  「ピーターパン」の劇を見たことがある人なら、海賊の首領が死

 ぬときには、最後の演説をするひまはないにちがいないと思って、

 あらかじめその演説をするのを、覚えているであろう。私もそれと

 同じで、今すぐ死ぬわけではないが、その日は近いと思うので、君

 たちに別れの言葉をおくりたい。

  これは、君たちへの私の最後の言葉になるのだから、よくかみし

 めて、読んでくれたまえ。

  私は、非常に幸せな生涯を送った。それだから、君たち一人ひと

 りにも、同じような幸福な人生を、歩んでもらいたいと願っている。

  神は、私たちを、幸福に暮らし楽しむようにと、このすばらしい

 世界に送ってくださったのだと、私は信じている。金持ちになって

 も、社会的に成功しても、わがままができても、それによって幸福

 にはなれない。幸福への第一歩は、少年のうちに、健康で強い体を

 つくっておくことである。そうしておけば大人になったとき、世の

 中の役に立つ人になって、人生を楽しむことができる。

  自然研究をすると、神が君たちのために、この世界を、美しいも

 のやすばらしいものに満ち満ちた、楽しいところにおつくりになっ

 たことが、よくわかる。現在与えられているものに満足し、それを

 できるだけ生かしたまえ。ものごとを悲観的に見ないで、なにごと

 にも希望を持ってあたりたまえ。

  しかし、幸福を得るほんとうの道は、他の人に幸福を分け与える

 ことにある。この世の中を、君が受け継いだときより、少しでもよ

 くするように努力し、あとの人に残すことができたなら、死ぬとき

 がきても、とにかく自分は一生を無駄に過ごさず、最前をつくした

 のだという満足感をもって、幸福に死ぬことができる。幸福に生き

 幸福に死ぬために、この考えにしたがって「そなえよつねに」を忘

 れず、大人になっても、いつもスカウトのちかいとおきてを、堅く

 守りたまえ。神よ、それをしようとする君たちを、お守りください。

君たちの友 

ベーデン−パウエル・オブ・ギルウェル 

       「ボーイスカウト日本連盟発行:カブスカウト 隊長ハンドブック」から

 

 補足

  このメッセージが記されたのがいつであるかは明らかではありません。

  世界スカウト機構HPにある「"B-P" - CHIEF SCOUT OF THE WORLD」という資料

 では、このメッセージの署名はロバート・ベーデン−パウエルになっており、この事実

 からこのメッセージが1929年以前に記されたものと考えられています。

  さらに、ベーデン−パウエル夫人によれば、「ボーイスカウト諸君」と書かれた封筒

 に入れられたこのメッセージは、旅をしていた時もいつも夫妻と一緒だったということ

 です。

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